諸行無常と、日本の未来と、私

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家は短命の家系。

母方は後継もなくすでに断絶、従姉妹も皆苗字が変わった。父方にも従兄弟(従姉妹も)は一人もいない。

 

実家は両親が亡くなった時に片付けて今はもう無く、双方の祖父母が住んでいた家には長らく誰も住んでおらず荒れ放題、跡取りのなかった家は解体され更地で野晒しになっている。

田舎はどこも似たような状況なんだろうな。

 

両親の実家の周りはみんな同じ苗字で、代々の土地を分け合って家を建てた名残を感じる。

解体された父方の家はカタカナのコの字で真ん中に中庭と井戸、家の周りにも庭がある大きな家だった。

水道と井戸水両方が台所に引かれ、夏でも冷たい水で手が凍りそうだった。井戸水で冷やしたトマト、キュウリに大きなスイカは冷え冷えで美味しかった。

母屋には天窓があり、冬は見上げると雪が降るのが目で分かる。

向かいの棟の2階の部屋は仕切りを取ると、3面が窓の海が見渡せる大きな部屋になる作りで、夏は気持ちの良い風が山側から海に向けて通り抜け、冷房がなくても涼しかった。

この2階の部屋で毎日朝10時まで勉強。夏休み帳など伯母に見てもらったり、庭から大きなダリアの花を摘んできて絵を描いたり、課題の工作もここで仕上げていた。

お風呂は五右衛門風呂。風呂釜の焚き付けで焼き芋を焼いてもらうのも楽しみで、黒くなったアルミホイルの塊を灰の中から掻き出し、お宝探しみたいだった。

田舎あるあるで、トイレは一旦外に出なければならない作り。小さかった頃、夜は怖くて一人でトイレに行けず祖母についてきてもらっていた。

「おばあちゃん、いる?」

「いるよ」

「おばあちゃん、まだいる?」

「ずっといるよ。大丈夫、待ってるよ」

「本当にいる?」

本当に怖かった。大きな蜘蛛がいることもあり、いると入れない。確認してもらっていないと分かっていても目が探し、夜だと本当はいるんじゃないかと怖さが倍増した。

物心ついた時から中学生くらいまで春休み、夏休み、冬休みと長い休みの間中過ごしていた家。

解体には立ち会っておらず写真でしか見ていなかったので、久々に訪ねたところ、更地を見て思った以上にショックを受けてしまった。

大好きだった沈丁花の花、庭にあったキウイの木も、大きな花をつけていたヨルガオ、高野山詣で記念に買ってきたまきの木も、もうどこにもない。

あとは、家から離れた場所に山と畑もあるはずだが、私にはもはやどこだかさっぱり見当もつかない。

 

家の隣は、一部駐車場や畑に様変わりはしているが生い茂る樹木のある庭は広く、記憶にある家の面影を残した本家がまだあった。子供の頃隣近所の親戚が集まり年末恒例の餅つきを土間で行なっていた本家。大きな土間はもうどこにも見当たらず、増築された部屋になっている。

昔と変わらず生垣に沿った砂利道を歩み本家へ。親世代の本家ご主人夫婦はすっかり高齢者となっていたが、まだまだ健在だった。昔、休みの度に一緒に遊んだ子供達は皆家を離れ、遠くに住んでいるとのこと。もう戻ってこないだろうと言っていた。

 

墓参りがてら近所を少し歩いて回ると、そこかしこの家には人の気配もなく、閉ざされ朽ちかけている家も少なくない。子供の頃からは想像がつかない町の寂れ具合で、諸行無常を目の当たりにした感じ。

自分の老後も心配だけれど、日本の田舎町自体も "後期高齢者" となっているようで、これからの先行きが心配になってしまった。普段都心に住んで忙しく過ごしているとなかなか気付かないけれど、人口減少、加速化を肌で感じた1日だった。

 

それにしても、帰る場所がなくなってしまった、と、改めて実感すると本当に淋しい。遠くない未来、一緒に過ごした子供の頃の思い出を持っている人も、私のことを昔から知っている人もみんないなくなってしまうだろうし。

そのうちメタバースVRで過去の記憶がリアルに再現、追体験のようなことができるようになると課金してしまうかも。。。

あと、墓じまいまでしてしまったら、私の実体?本体?は何処に行くことになるのかな。