飛び切りのウクライナ美人

20年以上も前、私の中のウクライナは、まだ旧ソ連≒ロシアという認識だった頃。長い夏休みに帰国せず、ロンドンに短期留学したことがある。

ホームステイ先に1週間遅れでやってきたのは併設された初級語学コースに通う予定のヴィクトリア。流れるように波打つ長い金髪、薄茶色にゴールドが散ったように見える虹彩の眼と、目が覚めるような美女で、スタイルも素晴らしい!

「ヴィクトリアです。ウクライナ人なの」と言われて驚いた。

ウクライナという地方があり、そういえば確か美人の産地だったか?と考えたが、初見で飛び切りのイタリア美人が来たーと思ったから。まるで "ヴィーナスの誕生" の絵画から飛び出てきたみたいに優雅に佇んでいたので。

  

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どちらかというと、ボッティチェリよりウィリアム・アドルフ・ブグローの方。

 

彼女は英語があまり出来ず、初めての海外で、どこに行くにもついてきて、私が一人で行動すると憤る。

クラスもスケジュールも違うけれど、登下校も私に合わせるという感じ。ランチも夜のパブもエクスカーションも週末も小旅行も行くところ全部一緒。週末の早朝、蚤の市に散歩がてら出掛けたら、寝ていた癖に「なんで起こしてくれなかったの」と拗ねられた思い出も懐かしい。

 

学校や街中でも目立っていて、特に男性陣の眼は釘付け。

私が一人で歩いていても知らない人から「ハーイ」という挨拶が。挨拶に応える間もなく、決まって「あれ、ヴィクトリアは?」と目で探しながら聞かれるまでがデフォルト。「私の名前知らないでしょ!」とか心の中でいろいろと突っ込みながら、悲しいかな付属品のモブとして私の顔を認識しているんだろうなと、ある意味感心したものだった。

美人って凄い。

 

ある日のこと、渡英前から楽しみにしていた週末スコットランド旅行、週末の予定を聞かれたのでウキウキしながら予約してること説明したら、一緒に行きたいと。

えっ、ハイシーズンなんだけれど!?   

急な予定変更でなかなか2人分の予約が出来ない、、、が、泣かれては仕方がない。予約追加はできず、空きのある夜行のコーチに変更、素敵なB&Bもキャンセルして、必死で探したユースホステルもどきが取れただけでも良かった。

長時間、狭く、硬いコーチのシート。お尻が長距離バスはもう嫌だと文句を言ったが、夏のエディンバラは本当に美しかった!

食事も2人の方が楽しい!  試しにハギスをと注文(私は2度と食べない)、ひとかじり分のみをギネスで流し込む。シェパードパイ〜今や私の得意料理となったくらい〜は本当に美味しかった!

夜の旧市街ゴーストツアーも1人だと申し込む勇気は無かったと思う。訛りがキツくてガイドが何を言っているのかほとんど聞き取れなかったけど。。。

今もあるのか不明だが、泊まったのは "ドリフターズ" ホステルだか、ホステル "ドリフターズ" だか。"放浪者"とはよく言ったもので、お世辞にもキレイとはいいがたく、シャワー室も言わずもがな。我慢できず掃除してシャワー浴びたけど、彼女は「こんなところで浴びたら病気になる」とそのまま過ごしていたのは文化の違いもあると思う。涼しいとはいえ長時間の移動に夏の日差しで汗はかいたし。。。ドミトリースタイル〜しかも男女混合だった〜は、後にも先にもこれっきり、もう2度とはない経験。

帰りのコーチ、彼女は深夜の休憩タイムにお金がおろしたいと銀行のATMへ。エラーでカードが引き込まれて、泣きながらどうにかしてと。

まだ、カードがそんなに浸透していない旧ソ連邦、これがないと手持ちがないので外国で生きていけないと言われた。深夜でどうしようもなく、翌日代わりに電話を掛けたり、支店に出かけたりと英語力が試されることに。。。

 

ただ、彼女は、いつ、どんな時でも、誰からでも声を掛けられると、脊髄反射かのように、にこやかに素敵な笑顔で応える。

滞英中ずっと最初から最後まで、側で見ていて、美人って凄いなぁ、でも本当に大変だなぁと実感したのでした。

 

今も、当時も、その昔も、実質違う国だったであろうロシアとウクライナ。ただ当時の私の認識では彼女は初めて親しくなった "ロシア人" だった。しかも、初めて一緒にお泊まり旅行した、とびきり美人でチャーミングなロシア人。

どうしているのかな、大丈夫かな、とウクライナのニュースを見るたびに頭をよぎる。

「お金あまり使えないの」とは言っていたものの、当時からすると旧ソ連邦からの留学生で、しかもクレジットカード?を持ってる人は少なかったのではないかと思う。身なりや態度からも富裕層に違いないと思ったこともしばしば。

ヴィクトリアは "ヴィクトリー=勝利" が語源。

美人でチャーミングな彼女に頼られたら何人たりとも絶対に断れないので、例えどんなに困った状況になっていたとしても、地球の何処かで幸せな人生を勝ち取って、素敵に、チャーミングに暮らしてるに違いない。